EXTRA:特集企画

<制作スタッフ インタビュー>

第1回 企画原案・月島総記氏と語るPBWの過去と現在

シナリオ制作事務所『チーム月島』の代表で、多くのゲームシナリオ・脚本・小説・ノベライズ・企画等を担当してきた月島総記氏。
『クレギオン 新作PBW』の企画・設定原案を務めている彼が、PBW、そして『クレギオン』との出会いについて、語ってくれた。

――まずは月島さんとPBM(プレイバイメール)やPBW(プレイバイウェブ)との出会いについてお聞かせください。

月島 2010年にフロンティアワークスが主催した『フロンティアチャレンジ2010』というコンテストが、私にとってPBMやPBWとの出会いでした。
このコンテストは、イラストレーターや声優、作曲家など、様々なクリエイターを発掘するコンテストでしたが、私はシナリオ部門で優秀賞をいただきました。
受賞に際して、審査員を担当されていたプロデューサーの雑賀寛さんとお会いして、以前、雑賀さんがPBMを運営されていたということで、いろいろとお話を聞かせていただいたことが、今に繋がっています。

 


――『クレギオン』の生みの親でもある雑賀さんとの出会いが、PBMやPBWとの出会いでもあったのですね。月島さんは、雑賀さんからPBMのお話を聞いて、PBMにどんな印象を持たれましたか?

月島 TRPG(テーブルトークRPG)とは違って、多くのプレイヤーが参加して大きな物語を展開できるところに魅力を感じました。
プレイヤーと運営が一緒になって物語を作って行くという双方向性は、コンピューターゲームにはない魅力でもあるので、当時の私にとってはすごく斬新なものとして感じられました。

 


――その後、チーム月島として雑賀さんがプロデュースされた『クロストライブ』(注1)に原案・原作として参加されることになられたわけですが、『クロストライブ』をはじめるにあたって、どういった準備をされたのでしょうか?

月島 まずはPBMやPBWについてしっかりと勉強しようと思い、雑賀さんからレクチャーを受けたり、過去に運営されていたPBMについて調べたり、当時運営されていた様々なPBWについても研究させていただきました。
雑賀さんからは、かつて運営されていた『クレギオン』に関して、詳しいお話をうかがいました。
『クレギオン』では、いくつもの陣営に分かれて、プレイヤー同士が対立したり、協力しあったりと自由に行動しながら、いくつものストーリーが並行して展開されていたと聞きました。
それぞれのプレイヤーが自分の目的を持って行動した結果、それが全体として一つの大きな物語へと繋がって行くという『クレギオン』のテイストは『クロストライブ』の設定を作る上で大変参考になりました。

 


――PBMやPBWについて研究された後、実際に『クロストライブ』の設定やシステムを構築する上で特に気を遣われた部分はどんなところでしょうか?

 

月島 いろいろありますが、特に気を遣ったのは、「プレイヤーの行動が世界に大きく影響を与えることができるような作品にする」という部分です。
運営側が用意した物語をプレイヤーがなぞるのではなく、プレイヤーの行動が一つ一つ世界に刻まれていくような作品にしたいと考えていました。
この想いは今回、参加させていだたく『クレギオン』においても変わりません。

 


――私自身もPBMで長年ゲームマスターをやらせていただいていたので実感がありますが、歴史を重ねるうちにPBMやPBWのゲームマスターは作家性(注2)が強くなりすぎて「自分が最初に敷いたレールの上をプレイヤーに走ってもらう」という展開が多くなってきた気がします。そういった意味でも『クロストライブ』はPBMの原点に回帰しているようで、逆に新鮮でした。

月島 結果的に『クロストライブ』は参加された多くのプレイヤーに喜んでいただけたと思うのですが、それは私自身の功績ではなく、当時のゲームマスターとプレイヤーが一緒になって作品を作り上げた結果だと思っています。
私は『クロストライブ』に原案・原作として参加し、運営開始前の制作初期から、運営がスタートした直後まで関わっていましたが、そこから1年ほどは現場を離れていました。
世界観や設定を作り、ここからプレイヤーとゲームマスターがどんな物語を紡いでくれるのか楽しみにしていたのですが、その後、1年経って現場に戻ると、とんでもないことが起きていまして……。

 


――どうなっていたのでしょうか?

 

月島 私が物語の起点として考えていた重要NPCの一人が死亡していたり、プレイヤーが手にすることを想定していなかった重要アイテムをプレイヤーが手にしていたりと、想定外の事態がいくつも起きていました(笑)。
正直に言うと、その段階ではじめて「PBWとはこういうものなんだ」と実感できました。
頭では「プレイヤーとゲームマスターが一緒に物語を紡いで行くもの」と理解していましたが、それを目の当たりにしたことで、あらためてこれが小説やコンピューターゲームのシナリオでは表現できないPBWというジャンルなんだと、感動しました。

 


――まさに月島さんが目指されていたPBWそのものといった感じですね。そこから完結に向けて調整を行う作業はかなり大変だったのではないでしょうか?

 

月島 あらためて運営から離れていた期間にゲームマスターのみなさんが執筆してくれた物語をすべて読んで、設定の整理などはさせていただきました。
でも、実際は今回の『クレギオン』にもゲームマスターとして参加してくださる風雅宿マスターや久潟椎奈マスターといったマスター陣が愛と根性と力業で完結へと導いてくれたおかげで、満足度の高い作品になったのだと思います。
私はそのお手伝いをした程度です。

 


――『クロストライブ』の運営終了から5年の時を経て、新たに『クレギオン』にチーム月島として企画・設定原案で参加されることになった経緯をお聞かせください。

 

月島 実を言うとこの企画はクロストライブの作業が一段落した2014年から動きはじめていました。だからもう、かれこれ6年間も、この作品と向き合っていた事になりますね……。
雑賀さんから最初にお話をいただいた時、その時点ですでに25年近くの歴史を持つ『クレギオン』という作品に関わらせていだたくのはかなり大変なことだと感じていました。
躊躇する気持ちもありましたが、雑賀さんの情熱に突き動かされて、「どこまでできるかわからないけど、やってみよう」と決めましたが、それが長い苦労の始まりでした(笑)。

 


――2014年の段階で、PBMとして運営されていた『クレギオン』が終了してから、すでに10年以上の月日が流れていたわけですが、資料集めは大変だったのではないでしょうか?

 

月島 そうですね。TRPG版『クレギオン』や野尻抱介先生の小説版、雑賀さんからお借りした当時のリアクション(注3)などを参考に資料をまとめたり、当時のプレイヤーさんが運営されているwebサイトなども拝見させていだいたり……。
それはまさにロステク(注3)の遺跡を探って行くような感覚でした(笑)。

 


――『クレギオン』はシリーズを重ねるうちに、拾われなくなった過去の設定なども数多く存在していますが、公式サイトを拝見する限り、今回の『クレギオン』では、過去の設定がかなり取り入れられているように感じられますが、いかがでしょうか?

 

月島 私はもともと資料をあたりながら、物語に活用できる設定をまとめて行く作業が好きなので、できるだけ過去の設定は盛り込んで行きたいと考えていました。
大変ではありましたが、資料を集めているうちに、『クレギオン』の様々な魅力に触れることができましたし、当時のプレイヤーさんの思い入れも知ることができました。
当時のプレイヤーさんたちの想いを感じつつ、これまでのシリーズをすべて集約したような作品になればと思い、今回の『クレギオン』を制作しています。

 


――PBMの『クレギオン』をプレイしていた当時のプレイヤーにとっては嬉しいお話ですね。一方で、今回の『クレギオン』ではじめて『クレギオン』というコンテンツに触れるプレイヤーもいらっしゃるかと思いますが、そのあたりはどうお考えでしょうか?

月島 過去にPBMの『クレギオン』をプレイされていたプレイヤーと、今回初めて『クレギオン』に触れるプレイヤーのどちらにも楽しんでいだたけるように「とある惑星にこれまで『クレギオン』シリーズに登場した様々な国家や組織が集まっている」という設定を作りました。
新規のプレイヤーさんは、これまでの『クレギオン』を知らなくても、この惑星で起きる様々な出来事を通して『クレギオン』というコンテンツの魅力を理解していただけると思いますし、過去のシリーズに触れたことがあるプレイヤーさんは懐かしさを感じてもらいながらも新作として楽しんでいただけるのではないかと思っています。


――『クレギオン』のことはよく知らなくても、宇宙を舞台としたSFもののPBWとして楽しんでいただいているうちに、これまで『クレギオン』が作り上げてきた様々な魅力に触れることができるというわけですね。

 

月島 そうですね。とはいえ、過去のシリーズをプレイされていたプレイヤーさんの中には、今回の舞台となる惑星だけでなく、過去の作品に登場した様々な惑星に行ってみたいと考えられている方も多いのではないかと思います。
そこで今回の『クレギオン』では、惑星間を自由に移動することが出来るようになっています。
例えば激しい戦争が起きている惑星に傭兵として降り立つも良し、政治的に不安定な惑星でフィクサーとして活動するもよし、平和な惑星を舞台に日常生活を楽しむのも良し、といった具合に様々なプレイスタイルを提供させていただければと考えています。

 


――運営開始が楽しみですね。最後に月島さんが今回の『クレギオン』や、今後担当することになるかもしれないPBWのようなプレイヤー参加型の大規模ゲームで目指していきたいことについてお聞かせください。

 

月島 「プレイヤーとゲームマスターが一緒に物語を紡いで行くもの」というPBMやPBWの原点となる考え方はこれからも大切にしていきたいと思います。
『クロストライブ』では私自身、PBWの原点的なものに触れ、感動を覚えました。
プレイヤーのみなさんもゲームマスターも、共に熱気に溢れ、一体となって作品を作り上げていく過程に立ち会えたことを嬉しく思っています。
ただ、一方でプレイヤーさんの満足度は高かったものの商業的に考えると厳しい部分はありました。
システム的にもゲームマスターの負担が大きくなりすぎる傾向にあり、皆さんの疲弊を招いてしまっていたと思います。
それなら、ゲームマスターさんの負担を軽減しつつ、プレイヤーが物語全体や世界そのものに関わっていると感じられるようなシステムを作るべきだと考えて、今回の『クレギオン』を制作しました。
プレイヤーの何気ない行動がちゃんと物語に反映され、積極的に参加すればするほど世界も大きく変わっていく……。
そんな工夫を『クレギオン』で実践したいと思っていますし、今後、『クレギオン』の先にあるかもしれないなんらかの企画でも実現していきたいと思っています。

 

INTERVIEW / TEXT:斎藤ゆうすけ



注1……『クロストライブ』は2013年~2015年まで運営されていたPBW。運営を 株式会社デジタルハーツが、原作・原案をチーム月島が担当。月島総記氏が執筆した小説版も講談社BOXよりリリースされた。


注2……『フルメタル・パニック!』(富士見ファンタジア文庫)のる賀東招二や『けんぷファー』の築地俊彦など、PBMのゲームマスターからライトノベル作家が数多く輩出された結果、聞き手を含め、一部のゲームマスターはプロットを綿密に作り過ぎた結果、自由度の低い物語を展開してしまっていたという過去がある。


注3……ロステク=ロストテクノロジー。『クレギオン』シリーズに登場する古の科学技術の総称。詳しくは公式サイトの「TIPS:設定用語」を参照。